チェキ!―CHECK IT !(8)

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チェキ!―CHECK IT !(8)



 待つこと一時間。ようやく先客様のお帰りだ。
「どうもありがとうございましたー!アキラくん、またよろしくね」
「はい。さようなら」
 挨拶を交わす声を衝立越しに聞きながら、ゆーさんがやって来るのを待つ。
「おまたせ。……じゃあ、こっちの個室へどうぞ」
 どうやらマッサージをしながら情報を伝えてくれるつもりらしい。
 ところが、個室のドアを閉めたとたん、およそゆーさんらしからぬ顔つきでいきなり釘を刺された。
「ひとつだけ条件があるよ」
 質問攻めにしようと意気ごむ出鼻を挫かれる。あまりに真剣な面持ちに、なにごとかと戸惑っていると、怖いほどの口調で行動を制する意味の台詞を告げられた。
「こっから先、君が聞く話の内容は、当分の間は自分の胸だけに収めておくこと!ちゃんと裏が取れるまでは、タッキーにだってバラしちゃダメだからね!」
 ゆーさんは、オレたちの仕事のなんたるかをよく知る人物でもある。知り合ったきっかけが、「お仕事」の内容を無視しては成り立たないだけに仕方がない。

 ゆーさんが被害者になった事件からこっち、実はバルバラから監視を言い渡されていた。機密漏えいを未然に防ぐためだ。バルバラの幹部には、ゆーさんの口のしまり具合が不安に思えるらしい。
 オレにしてみれば、趣味と実益を兼ねられるので、ゆーさんとの付き合いを仕事ととらえていはいない。バルバラは、こんな態度のオレひとりじゃ心もとないと判断したのかもしれない。
 ああ、そっか。鬼堂がここへ通うようになったのは、案外バルバラの命令だったりすんのかも。
 そう考えれば、らしからぬ行動にも納得がいく。鬼堂なら、ゆーさんを疑っていてもおかしくない。
 鬼堂は、人への信頼とか約束とか友情とかを信じない性質だ。「昨日の友は今日の敵」を座右の銘としているのだから、かなりの筋金入りといえる。

「いいぜ、約束する。でさ、どうだったの?あいつ、なにか実のある話をしてった?」
 約束はするが絶対じゃない。ゆーさんには悪いが、この仕事はきれい事ばかりじゃやってられない。
 ところが、警戒を強めたゆーさんはなかなか本題に入ってくれない。もくもくと施術の準備を進めるだけだ。
「熱かったら言ってね」
 いつもどおり膝から下を蒸しタオルで温められ、その心地よさも手伝って緊張が解れた。
 ふぃーっと、ほとんど無意識のうちにため息がこぼれる。そんなオレの様子を用心深く観察していたゆーさんだったが、ようやく決心がついたのか、少しもったいをつけ低い声で囁きかけてきた。
「……アキラくんって、おそらくただ者じゃないね。だってさー、リンパの流れを見てあげるって理由をつけて首筋に触れたら、脈、なかったもん。――これって、ゆーくんと同じ」
 いきなりのレア情報!
 同時に、渡会が人外だと最初から見切っていた鬼堂の洞察力に舌を巻く。でも、ゆーさんのコレは決定的だ。しかも、鬼堂のやつがまだ知り得ていない情報だ。
 ははーん。人外の中でも一番やっかいなヴァンパイアなのか。
 脈がないというのがなによりの証拠だ。狼男や変身獣の類なら、普通の生き物と同じ身体のしくみを持つので、当たり前だが心臓は動いている。
 だが、ヴァンパイアだけは例外だ。
 オレたちは年を取らない。細胞が老化しない、というか成長もしないのだから、つまりは活性化が皆無。だから、身体に栄養やら酸素を循環させる血流が必要ない。
 じゃあ、高校生っていうのも見かけだけか……。ええ?待てよ?それって、オレと同じ境遇ってわけ?
 自分は一族の中ではかなりの異端児だ。こんな年若いヴァンパイアは、ほかグループでも出会った覚えがない。その理由はいたって単純。子連れは人間社会で生活しにくい。成長しない子どものいる家など、いらぬ疑いをかけられるに決まっている。
 ゆえに、オレンちも同じ場所に五年はとどまらない暮らしを続けていた。幸い薫子と康介が引越しマニアなので、今までさしたるトラブルもなかったわけなのだが。

 考え事に囚われて、目の前のゆーさんを蔑ろにしてしまったようだ。気がつくと、再び真剣な態度に戻っている。
「ゆーさん?」
 手が止まったままのゆーさんに思わず声をかけた。
「……だからって、アキラくんが人外、しかもヴァンパイアだというわけじゃないんだからね!そういう可能性もあるって話!」
 いっきにそれだけまくし立てると、どこか怒ったような顔つきでマッサージを再開し始めた。
 なーるほど、だから鬼堂に話すなってことか。あいつが知ったら、それこそ即刻殲滅(せんめつ)になっちまうもんな。
 それに、ゆーさんにしてみれば、お気に入りの君が人外なんて想定外だろう。自分もかつての被害者だから、彼なりにショックを受けたのかもしれない。
 先ほどの、一見理不尽とも思える要求の理由がようやくはっきりした。けれども、話はこれで終わりじゃなかったみたいだ。
「でさ、逆にアキラくんからお願いをされちゃったんだ。本当はゆーくんに直接頼むつもりだったみたい。でも、さっき受付でちょっとトラブったでしょ?それで僕に話したんだと思うんだけど」
「お願い?……なにさ、それ」
 お願いの内容なんて想像できない。それでなくても、限りあるオレの思考能力は、渡会アキラがヴァンパイアというだけでイッパイイッパイだ。
「友だちを紹介してほしいんだって」
「友だち?……誰?」
「……先週、君がこのビルの前で立ち話をしていた相手だよ」
 立ち話?そんなことしてたっけ?
 安住かな?……いや、もしかしたら高橋か?
 きちんと名指ししてくれ、と言いたくてゆーさんを見やる。すると、今度は一転、自分の世界へ入りこんでしまっている。
「……僕と趣味が合うのかなー。ああ!だけど三角関係はカンベンしてほしいな。できればー、そのー、三人で仲良くイチャイチャってーのをやってみたいかなあ」
「……」
 いきなり口が滑らかになった。それだけで「友だち」の性別が特定できてしまう。
 店長の個人的な趣向は認めているが、こうまであからさまにされたらどんな顔をしたらいいのかわからなくなる。
 自然とほおのあたりがひくついてしまった。だがゆーさんはマイペースを崩さない。
「紹介なんて冗談じゃない。絶対に断ろうと思ったんだけど、惚れた弱みっていうか、ああまで熱心に頼みこまれるとダメって言えなかったんだ。あーあ、自分の軟弱さ加減を呪うよー」
「……てことは、あいつが紹介してほしい相手って、もしかして鬼堂?」
「ピンポーン!ご明察!」
 クイズ番組じゃねえんだから、そのリアクションはやめてくれ!
 憤慨するオレなど、もはや眼中にない。ゆーさんは勝手に悲観的な妄想を膨らませ続けるばかりだ。

 いわく、見た目も性格も似たもの同士なのに惹かれるなんて、アキラくんって相当ナルちゃんなのかな?そうじゃなくて、僕と同様、趣味がいいのかもしれない。それは認めるけど、よりにもよって僕に頼まなくてもいいじゃないか。僕の気持ちはわかっているんだと思ったのに!ああ、ふたりがデキちゃったら僕の立場はどうなるの?うんぬん。

 好きにしてくれと、いつものオレなら捨て置くところだが、もうひとことゆーさんがもらした言葉に己の対応が百八十度変わった。
「ちょっと気になるフレーズを口にしてもいたよ。タッキーを見て自分と同じ感じがするんだって。それって、タッキーをヴァンパイアだと思ってるんじゃない?」
 ええ!?あいつがヴァンパイアであるはずがない。それはオレが一番よく知っている。
「でも、だからといって、やっぱり自分が仲介役にはなりたくないんだよね。だって、そんなことしたらタッキーに誤解されちゃう!だからゆーくん、僕の代わりをして?」
 経緯はさておき、なんだか鬼堂の考えどおりに事が進んでいる。本人とサシで会って話せるなら、スレイヤーのあいつにとって願ってもないチャンスだろう。上手くいけば、その場でバッサリサヨナラという具合にもできる。
「乗ったぜ、その話」
「乗ったって、誘われたのは君じゃないよ」
「わかってるって!引き受けるよ、その役」
 ノリノリで告げたら、ゆーさんの顔がかすかに曇った。
「……その前に、僕との約束は?」
「はい?ああ、そっちもちゃんと手を打つぜ」
「じゃなくて、僕の方が先約だからね!あのふたりが会う前に、タッキーとのデートを実現させてよ!」
 このあたりになると、男も女も関係ないみたいだ。つまりは、鬼堂と渡会がふたりきりで会ってよからぬ関係になる前に、自分が鬼堂を落とす!――まあ、ゆーさんの考えはこんなところだろう。
「わかった、わかったよ!」
 というやり取りを経て、オレはゆーさんとの約束と引き換えに渡会アキラのレア情報を手に入れた。あとの仕事は鬼堂の役目だ。でもって、この情報の代価を支払うのもな!
 リフレクソロジーで軽くなった足取りと、ここ最近では一番というくらいのウキウキした気持ちで、オレは鬼堂との待ち合わせ場所であるバルバラへ向かった。

 * * *

 バルバラは秘密組織だ。
 なんつーと意味深に聞こえるが、その実態は殺し請負業だったりする。
 ただしターゲットは、ある条件を満たす人外に限定される。人に危害を加える、通称オーガーという連中を退治するのがオレたちハンターの役目だ。
 仕事は、基本的にふたり一組で行う。その上には、いくつかのチームを束ねるボスと呼ばれる上司がいる。
 オレたちのボスは風間今日子という人だ。ものすごい美人!なれども半端じゃない頑固者。でもって男勝りで仕事ができるという、キャリアウーマンを地でいくおねーさんだった。
 基本的にバルバラの職員は人外じゃないから、もちろん見た目と年齢とはほぼ一致する。今日子さんは確か二十五。番茶も出花といったお年頃なのに、だいぶ色気には縁遠い。

 メインエントランスで暗証番号を入力し、さらに虹彩をチェックされ、ようやく入室許可が下りる。執務室へ足を踏み入れると、そこには鬼堂だけでなく、なんと今日子さんの姿もあった。
「あれ?今日はなんかありましたっけ?」
 とぼけているのでもなんでもない。今日子さんが同席する理由が本当に思い当たらない。なぜなら、ボスはめったにオレたちハンターと直接接触しないからだ。命令だって、電話やメール、あるいはメッセージディスクで伝えられるのが普通だ。
 だが、今日子さんにはちゃんと理由があるようだった。
 久しぶりに会うオレたちのボスは、長い髪を緩く束ね、身体にフィットしたミニ丈のツーピースから伸びる形のいい足を大胆に組んで座っていた。その姿は、いつ見てもほれぼれするほど格好いい。なにを隠そう、この人こそオレが唯一心を惹かれる女性。いわゆる憧れの君だったりするわけ。
「一ヵ月ぶりね、由典。調子はどう?」
 にこやかに話しかけられ、自ずとほおが緩んだ。
「オレはいつでも絶好調ですよー。ちゃーんと任務も順調にこなしてるでしょう?」
「そうね。あなたたちの戦果はバルバラでもピカイチだわ。さすがね」
 褒められるのはなんであれ嬉しい。たとえそれが、鬼堂の手柄におんぶに抱っこだとしてもだ。
「今回のミッションはちょっと手強いようだけど、詳細はもう把握している?」
「あ、はい。この間鬼堂から聞きました」
 ちゃんとしておいてよかった。わからんなどと答えるようではハンター失格だ。
「すでにこれだけ被害が出ているわけだし、解決は早いほど好ましい。当初は別のチームが担当していたんだけど、どうも荷が勝ちすぎたようで事態は好転しなかった。残された方法としては、あなたたちの手腕に賭けるしかないのよ」
「任せてください!オレと鬼堂にかかれば、どんなオーガーでもイチコロですよ!」
 胸を張り自信たっぷりに断言した。これだけのビッグマウスが許されるのも、ひとえに過去の戦績のおかげだ。それほどに、バルバラにおけるオレたちふたりの出来は突出している。

 和やかに会話を進めるオレと今日子さんとは対照的に、横にいる鬼堂のご機嫌は麗しくない。それを隠そうというつもりか、唐突にかぶっていた帽子のつばを引き下げた。これで本人はごまかせていると思ってるんだから、鬼堂だってかなり抜けている。なにかにイラつく感じがミエミエだ。
 持って生まれた顔のつくりは上等なのに、こいつの欠点はずばり表情にある。普通にしている時でも、目つきの悪さゆえガンを飛ばしているように見える。今はたぶん、オレが大口を叩いているせいだろう。
 にしても、今日子さんの目の前で鬼堂がこんなふうになるなんてずいぶんとイレギュラーだ。鬼堂の外面のよさはオレだけが知る。そして、こんな仏頂面を向ける相手が、オーガーと、そして迷惑にもオレに限定されるというのも。
「どうしたよー、おまえ。なんでそんな顔してんの?」
 原因がわかっていないだけに、軽い調子で質問を投げかけた。
「……さっき僕の携帯に電話があった」
「携帯?電話?それがなんでおまえの不機嫌に通じるんだよ」
「わからないとでも言うのか?」
 あ、まじぃ。こいつのこれって爆発寸前の合図だ。
「ごめん。オレ、なんかヘマした?」
 勘違いに気づいたオレは、とりあえずといった感じでいちおう下手に出た。防衛本能が働いたといってもいい。
「心にもない言葉などいらない」
「うっ……」
 冷たい声を聞き背筋が瞬時に凍りつく。
「僕がどうして怒っているのか……おまえこそ、あまり人をなめるなよ」
 恫喝されて観念した。ここでこいつが臨界点を超えたら、たぶん被害は今日子さんにまで及ぶ。そう判断したオレは、不本意ながらも謝罪の言葉を重ねる。
「な、なめてなんかいねーよ!おまえが半端じゃねえやつだっていうのは、嫌ってくらい知ってるんだからさ。だから、ごめん。わかるように説明してくんない?」
 必死に言い募ると、さすがの鬼堂も少し怒りを収めてくれた。目元までかかっていた帽子を元の位置へ戻す。当然、この状態だと顔つきがはっきり確認できるわけだが、見たところさっきまでほどぶーたれてはいない。
 だが、安心も束の間、続けて出た話の内容はオレにしてみりゃ寝耳に水だ。
「取引したんだってな、情報提供者と」
「え?」
「おまえは自分の相棒を売る真似までするのか?」
「そ、それって……!」
 間違いない。鬼堂の電話の相手はゆーさんだ。でも、オレを飛び越して直に連絡なんかするか?それができるなら、人に念を押すような言い方をすんなよー!それとも、そんなにオレが信用できねえのかなあ。
 あわてるオレの顔を凝視したまま、鬼堂が大きくため息をつく。呆れているのかあきらめたのか、はたしてどっちの意味だろう。
「沖田さんとどんな約束をしたか知らないが、僕は断る。おまえの情報も必要ない。オーガーに関しては自分で探ることにした。だから、ここから先は別行動だ」
 高らかに宣言され、オレは立場をなくした。そして同時に理解できた。どうしてこの場に今日子さんがいたのかという、そのわけを。
「――という請願が樹(たつき)から出ているの。さて、由典。なにか反論があるなら今ここで聞くけど?」
 反論などあるはずがない。だって、鬼堂の話のすべてが事実だから。
 けどさー、ゆーさんってば、ひでぇよー。先走りするなんて、反則だ!
 この期に及んで自分の非より他人の落ち度に考えがいくあたり、オレというヴァンパイアの器の大きさがうかがい知れる。
 たぶん、渡会に対して先手を打つつもりだったんだろうなあ。にしても、せっかちすぎ!せめてオレの結果報告を待てっていうんだ。今度会ったらとっちめてやる。
 自分の置かれた状況に直接関係ない事柄ばかりが頭に浮かんでは消えていく。そんなオレを見て、今日子さんまでもがあきらめ顔になった。
「あなたはしばらく謹慎ね。このミッションは、現時点から樹がひとりで担当するようになりますから」
 ええ?そりゃねーよ!んじゃ、今までの苦労はどうしてくれるわけ?でもって、鬼堂がこの事件を解決するまで、オレは「お仕事」を干されるってーの?
 取引に際して邪(よこしま)な感情を持ったのは事実だ。けど、ゆーさんと個人的にちょっと会う時間を作るくらい、どうにでもなるじゃん。別に貞操を捧げろって言ってるわけじゃないんだしさー。
 だが、返事をしないまま粘っても、すでに許されるような問題じゃないらしい。
「それでは、報告は随時メールを通じて行いますので」
「成果を期待しているわ」
「任せてください」
「き、鬼堂……」
 名前を呼んでも、視線すら向けてくれない。
「悪かったよ、謝る!……で、お詫びのしるしにひとつだけ情報をくれてやるよ」
 無視して立ち去ろうとする鬼堂の腕をとっさにつかんだ。本当に頭に来ているなら、きっと即座に振り解かれ、場合によっては蹴りのひとつでも食らったかもしれない。
 しかし、あいつはそれをしてこなかった。してこないばかりか、オレの言葉の続きを待つ素振りを見せた。
「渡会アキラは、おまえの予想どおり人外だ。それも一番やっかいなヴァンパイア。こっちの正体に感づいているかどうかは定かじゃねえが、向こうもおまえに接触したがっている。本当は単独行動をしない方が好ましいんだが、こうなっちゃそうもいかねえよな」
 言い終えるまで鬼堂はじっとしていた。やがて思いだしたようにオレの腕を払い落とす。けど、なぜかその行為に悪意は感じられない。
「いいだろう。おまえはおとなしく反省文でも書いてろ。書き上げたら僕が見てやる」
 どういうつもりか、かぶっていた帽子をオレに投げてよこし、加えて謎かけのような台詞を告げ部屋を出ていく。
「口では文句を言っても、甘いわね」
 背後で今日子さんがポツリと呟く。当然ながらこっちも理解不能だ。
「じゃあね、由典。このミッションが終わったら、たまには一緒にご飯でも食べましょう」
 かけられた涼やかな声がいつまでも耳に残った。

 ひとりにされ、これからどうしようかと柄にもなく考えこんでしまった。なにより、ゆーさんとの約束を反故にしてしまったのが心苦しい。
 仕方ねえ!オレも自分だけでなんとかしてみるか。ゆーさんには事情を説明して許してもらおう。
 心を決めたとたん、なんだか気持ちが楽になった。思えば、この仕事に就いてから、鬼堂の命令なしで動くのは初体験だ。
 来た時と同様、軽やかな足取りでバルバラをあとにする。そのオレの後ろ姿を、建物の陰で鬼堂が見ていたなんて、この時にはまったくわかっていなかった。



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